vol.12 「人生はシゴトだけじゃない」松原市の挑戦

☆本日の問い☆
・余暇を過ごしているときに、暇だと感じる瞬間はあなたの中でありますか?それはどんな時でしょう?また、なぜ退屈だと感じるのでしょう?・子どもたちが〈欲望-関心〉の中心点に迫っていく過程の中で、余暇をテーマにどんなことを考えられる機会があると、“よい教育”に資する機会をつくれるでしょうか?(COMPUSをテーマにもしながらぜひお考えください!)...
なかとうひろと 2024.08.27
誰でも

本日は大阪府松原市の取り組みをピックアップして、「教育」について考えていきます。

大阪府松原市は8月26日、今年度から中学生が安心・安全な環境でロールモデルと出会える会員制ウェブサイト「COMPASS(コンパス)」を、静岡大学教育学部の塩田真吾准教授の研究室と共同開発したと発表しました。

(余談でもありご存じの方も多いと思いますが、教育新聞のサイトは読みごたえのある記事も多くてとてもおすすめです!!)

***

〈記事の概要〉

松原市は、キャリア教育の新しい形として中学生向けの会員制ウェブサイト「COMPASS」を静岡大学と共同開発しました。コロナ禍で職場体験学習が中止された中、COMPASSは職場ではなく多様な大人とのつながりを重視し、彼らの人生観や趣味、仕事への姿勢を紹介することで、子どもたちに多様なキャリアの選択肢を提供します。サイト内では大人たちのプロフィールが1問1答形式で紹介されており、コメント機能を通じて中学生が質問や感想を投稿し、直接やり取りすることが可能です。

松原市は、学力向上のためには学校外での学びのモチベーションを高めることが重要と考えています。COMPASSでは「人生はシゴトだけじゃない」といったキャッチコピーのもと、仕事だけでなく趣味や余暇、家庭生活も含めた新しいライフキャリアプランの考え方を提案。現在、30人の大人が登録されており、今後も増やす予定です。COMPASSは生徒だけでなく、不登校の生徒にもアクセスが可能で、多様な人生観に触れる機会を提供します。

教育長の美濃亮氏は「これからのキャリア教育では、職場体験だけでなく、多様な大人の生き方に触れることが重要」と述べています。塩田准教授も「仕事だけでなく、余暇の使い方を学ぶことがこれからの教育で求められる」と強調。COMPASSは、こうした新しいキャリア教育のあり方を模索し、地域社会全体での生徒の成長をサポートします。

***

私の中ですごく素敵だなと感じた点は、「余暇」に着目をしたキャリア教育が考えているという点です。

あなたは、「余暇」をテーマに教育について考えたことはありますのでしょうか?
私は「余暇」はもちろんですし、暇・退屈などをテーマに最近は教育に関して考えることも多く、これらはまさに“よい教育”にもつながる大切な洞察を与えてくれるキーワードだと感じています。

読んでいて特に面白かった本は以下です。
(読まれたことのある方もきっと多いのではないでしょうか?)

https://amzn.to/3YVNuqs

https://amzn.to/3YVNuqs

Kindle Unlimitedでは今0円で読むこともできます!!)

例えばこちらの書籍では、以下のようなことが述べられたりしています。

退屈するというのは人間の能力が高度に発達してきたことのしるしである。これは人間の能力そのものであるのだから、けっして振り払うことはできない。したがってパスカルが言っていた通り、人間はけっして部屋に一人でじっとしていられない。これは人間が辛抱強くないとかそういうことではない。能力の余りがあるのだから、どうしようもない。どうしても「なんとなく退屈だ」という声を耳にしてしまう。 人間はなんとかしてこの声を遠ざけようとする。わざわざ命を危険にさらすために軍職を買って戦場に赴いたり、狩りや賭け事に興じる。だが、そうした逃避も退屈の可能性そのものに対しては最終的には無力である。人間の奥底からは「なんとなく退屈だ」という声が響いてくる。
國分功一郎. 暇と退屈の倫理学(新潮文庫) (pp.229-230). 新潮社. Kindle 版.


このように「退屈」というのは、生理的欲求と同じくらい人間にとっての根源的だといえる所与ではないかとの示唆も本書ではなされています。

あなたもきっと、子ども、そして内なる自分から次のような声を聴いたことがありますよね。

「なにもやることがなくて退屈だな〜」
「楽しんでいるはずなのに、なんか退屈。」
「忙しいんだけど、人生が退屈だ。」

これらの「退屈」って一体なんなんでしょう?
そもそも退屈と暇の違いは何だと思いますか?

もし子どもが「退屈ー」と言っていたら、あなたはどんな関わりをしたいなと感じるでしょうか?
きっと「退屈」に関する解像度が上がることで、「退屈ー」と話す子ども達との関わりたい関わり方もあなたの中で変容するのではないかと感じています。

何より、退屈に向き合うことは「自分自身の人生」にとっても生きてくる営みですのでとってもおすすめです!!

はい、ということで本日の問いです!

☆本日の問い☆
・余暇を過ごしているときに、暇だと感じる瞬間はあなたの中でありますか?それはどんな時でしょう?また、なぜ退屈だと感じるのでしょう?

・子どもたちが〈欲望-関心〉の中心点に迫っていく過程の中で、余暇をテーマにどんなことを考えられる機会があると、“よい教育”に資する機会をつくれるでしょうか?(COMPUSをテーマにもしながらぜひお考えください!)

・キャリア教育について考えるとき、頭の片隅で「仕事は充実するべきだ」「仕事においてこそ人は充実していなければならない」と考えている自分はいますか?

***

以上が、本日のピックアップテーマでした。
ではまた、お会いしましょう!

今日はきっと、いい日になるよ!

今日はきっと、いい日になるよ!

***

〈いつもの注釈 : 当メルマガが大切にしていること〉

“よい教育”について考える時、「問いを立てるという行為」にこそ価値があります。

AIなどの発展により、「問い」があれば「答え」を見つけてくれる存在が私たち人間のすぐそばに現れました。今はまだ「答え」が不正確なこともあるかもしれませんが、この精度はどんどん高まっていくでしょう。そして、近い未来にはまるで「ドラえもん」のように、私たちの欲求を叶えてくれる存在になっていくでしょう。

このような未来を想像する時、人間にとって大切なのは「そもそもの問いを見つけること」だということが分かります。「自身の欲求に向き合い問いを見つけること」こそ人間にできることであり、人間にとって自由に生きる営みの土台となるものです。問いが見つかれば、あとは「ドラえもん」と一緒にその問いと向き合い、つくりたい未来をつくっていくことができます。

のび太のように、「助けてドラえもん!」「〜したいよドラえもん!」と表現できる存在。

そんな存在こそ、きっとこれから求められる人間像です。

これは社会的にという観点でもそうですし、一人ひとりが自由に生きていくためという観点に立っても北極星となる人間像だと思います。

この「求められる人間像」を踏まえ、本メルマガでは「仮の問い」を発信するにとどめています。「仮の問い」から、ぜひ「あなただけの問い」を発展をさせてください。そして「あなたのつくった問い」から、素敵な未来をぜひつくっていってください!そんな風に、当メルマガをつかっていただけますと幸いです。素敵な物語があなたを起点に紡がれていくことを、私自身心から願っています。

無料で「学園長、中藤寛人の教育ニュースレター」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
vol.27 おすすめの読書術。「BookNotion Z」が読書体験...
誰でも
vol.26 教育の道に進みたいあなたへ
誰でも
vol.25 今この瞬間の学びを支える!形成的評価で導く"よい教育"と...
読者限定
vol.24 フリースクールにおけるマーケティングの試行錯誤
読者限定
vol.23 “よい教育”の実践理論を、4象限で考えてみる
誰でも
vol.22 「テクニックとして◯◯を授ける」
誰でも
vol.21 自己紹介noteが完成しました!
誰でも
vol.20 「ありのまま」の罠